【ステマ規制Q&A】ブログ・SNSでの広告表示、どこまでがセーフ?実践対策を解説
はじめに
ブログやSNSで情報発信を行う際、「ステマ規制」という言葉を耳にする機会が増え、何に注意すれば良いのか不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。商品をPRしたり、サービスを紹介したりする機会の多いブロガーやSNSクリエイターにとって、この規制は決して無視できない重要なルールです。
この記事では、デジタル発信を行う皆様が安心して活動できるよう、「ステマ規制」の基本的な内容から、ブログやSNSでの具体的な疑問点、そして実践的な対策までをQ&A形式で分かりやすく解説します。法的トラブルを未然に防ぎ、読者からの信頼を失わないためのポイントを確認していきましょう。
1. 「ステマ規制」とは?ブログ・SNS運用者が知るべき基本
1.1. ステマ規制の概要と目的
「ステマ規制」とは、ステルスマーケティング(通称:ステマ)を規制するための法律で、正式には景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に基づく規制を指します。2023年10月1日から施行され、インターネット上の広告表示に関する透明性を高めることを目的としています。
ステルスマーケティングとは、消費者に広告であると気づかれないように行う宣伝活動のことです。例えば、企業から報酬や商品の提供を受けているにもかかわらず、その事実を伏せてあたかも個人の感想であるかのように商品やサービスを紹介する行為などがこれに該当します。このような行為は、消費者が公正な判断をする機会を奪い、不当な表示として景品表示法で禁止されるようになりました。
1.2. 規制の対象となる行為
ステマ規制の対象となるのは、事業者(企業や店舗など)が第三者(ブロガー、SNSクリエイター、インフルエンサーなど)に対して、商品やサービスの宣伝を依頼し、その発信内容が「広告であること」を消費者が認識できない場合に発生します。ここで重要なのは、「事業者の表示」と見なされるかどうかです。具体的には、以下の2つの要件を満たす場合に規制の対象となります。
- 事業者が表示内容を決定できる立場にあること
- 報酬の有無に関わらず、事業者が発信内容を指示・決定できる関係性にある場合。
- 一般消費者が広告であることを判別することが困難であること
- 広告である旨の表示がされていない、または表示が分かりにくい場合。
2. ブログ・SNSでのよくある疑問と対策
ここでは、ブロガーやSNSクリエイターの皆様からよく寄せられる疑問にお答えします。
2.1. Q1. 企業から依頼されたPR投稿は、どう表示すれば良いですか?
A. 「広告」「PR」など、広告である旨を明確に表示することが義務付けられています。
企業から報酬を得て商品やサービスを紹介する場合、それは「事業者の表示」に該当するため、広告であることを明確に示さなければなりません。
具体的な表示例:
- 記事や投稿のタイトル、または冒頭部分に「[PR]」「[広告]」「〇〇社提供」などを明記する。
- ハッシュタグで「#PR」「#広告」「#プロモーション」などを使用する。
- 動画コンテンツであれば、冒頭や概要欄、画面上部に「プロモーションを含みます」といったテロップを表示する。
表示は、読者がすぐに広告だと認識できる「分かりやすい場所」に記載することが重要です。文章の最後に小さく書いたり、多くのハッシュタグの中に埋もれさせたりする行為は不適切と判断される可能性があります。
2.2. Q2. 無償で商品やサービスを提供された場合も、広告表示は必要ですか?
A. 「事業者の表示」と判断される場合は必要です。
金銭的な報酬がない場合でも、商品やサービスの無償提供を受けることで、事業者が表示内容を決定できる立場にあると判断されることがあります。例えば、「提供した商品をレビューしてください」といった依頼を受けてレビュー記事を作成する場合などがこれに該当します。
無償提供であっても、事業者との間に宣伝を目的とした依頼関係が存在し、その内容が消費者を欺く可能性があると判断されれば、ステマ規制の対象となる可能性があります。読者に誤解を与えないためにも、提供を受けた旨を明確に表示する方が安全です。
2.3. Q3. 自分で購入した商品をレビューする場合、広告表示は不要ですか?
A. 基本的には広告表示は不要です。しかし、アフィリエイトリンクを貼る場合は注意が必要です。
ご自身で費用を支払って購入した商品やサービスを、純粋な感想として紹介する場合、それは「個人の感想」であり、「事業者の表示」には該当しないため、ステマ規制の対象にはなりません。
ただし、そのレビュー記事にアフィリエイトリンクを設置している場合は、注意が必要です。アフィリエイトリンクは、リンクを経由して商品が購入された場合に報酬が発生する広告の一種です。この場合、「事業者の表示」とまでは言えないことが多いですが、読者に対して「このコンテンツにはアフィリエイト広告が含まれている」ことを分かりやすく示す配慮が求められます。
2.4. Q4. アフィリエイトリンクを貼る場合、どこまで表示が必要ですか?
A. 報酬が発生するリンクであることを読者が認識できるよう表示を推奨します。
アフィリエイトリンク自体が景品表示法の「広告である旨の表示義務」の直接的な対象となるケースは限定的ですが、サイト運営の透明性を保ち、読者からの信頼を得るためには、表示することが望ましいでしょう。
推奨される表示例:
- 記事の冒頭やアフィリエイトリンクの近くに「本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれています」「このリンクからは成果報酬が発生します」といった文言を記載する。
これにより、読者は記事の内容が個人の感想か、それとも報酬が絡む紹介なのかを判断しやすくなります。
3. これだけは確認!ブログ・SNS投稿前のチェックリスト
デジタル発信を行う前に、以下のポイントを確認することで、ステマ規制に抵触するリスクを減らすことができます。
- 「事業者の表示」に該当するか?
- 企業やブランドから依頼を受けたり、商品やサービスの提供を受けたりして投稿を作成していますか?
- 報酬の有無に関わらず、事業者との間に宣伝・紹介を目的とした関係性がありますか?
- これらの条件に該当する場合、「事業者の表示」と見なされる可能性が高くなります。
- 「広告であること」を明示しているか?
- 投稿のタイトル、冒頭、ハッシュタグ、動画のテロップなどで、「広告」「PR」「プロモーション」「提供」といった明確な表示をしていますか?
- 表示は「分かりやすい場所」にあるか?
- 読者がスクロールせずとも、投稿を見た瞬間に広告であることが分かる位置に表示していますか?
- 小さすぎる文字や、多数のハッシュタグに埋もれていないか確認しましょう。
- 虚偽・誇大な表現はないか?
- ステマ規制とは別の景品表示法のルールですが、商品やサービスの内容について、実際よりも著しく優れていると誤解させるような表現や、根拠のない断定的な表現は避けるべきです。
4. もし「ステマ」と疑われたら?対応のポイント
万が一、自身の投稿が「ステマ」であると消費者庁や消費者団体から指摘されたり、SNS上で批判されたりした場合は、冷静かつ迅速に対応することが重要です。
- 速やかな事実確認と修正: まず、指摘された内容について事実関係を確認し、もし不適切な点があれば、速やかに表示を修正または削除しましょう。
- 誠実な対応: 消費者や読者に対して、誠実に説明し、必要であれば謝罪の意を表明することが大切です。
- 専門家への相談: 状況が複雑であったり、どう対応すべきか判断に迷う場合は、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。早期に専門家の意見を聞くことで、問題が大きくなる前に適切な対処ができる可能性があります。
不必要な不安を煽るものではありませんが、万が一の事態に備え、対応策を把握しておくことは、デジタル発信者としての責任でもあります。
まとめ
ステマ規制は、消費者が誤解なく商品やサービスを選択できるよう、公正な情報提供を促すための重要なルールです。ブログやSNSで情報発信を行う皆様にとっては、事業者の意図をくみ取りつつも、読者からの信頼を損なわない誠実な姿勢がこれまで以上に求められます。
最も重要なポイントは、「広告」である旨を明確かつ分かりやすい方法で表示することです。ご自身の発信が「事業者の表示」に該当するかどうかを常に意識し、少しでも疑問を感じた場合は、本記事のチェックリストを活用したり、専門家である弁護士に相談したりするなど、予防的な行動を心がけましょう。信頼性のある情報発信を通じて、読者との良好な関係を築き、安心してデジタル活動を続けていくための一助となれば幸いです。